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新たな時代の到来

狼と香辛料XV 太陽の金貨<上> (電撃文庫)狼と香辛料XV 太陽の金貨<上> (電撃文庫)
(2010/09/10)
支倉 凍砂

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このシリーズでは一巻からずっと「古き神々の時代」が遠い過去であると描かれてきたわけですが、最終章にきてついに、「剣と盾の時代」の終わりの始まりとなりました。これからは経済が世界を動かしていく。
これはファンタジーではなく、我々の歴史上実際に起こった出来事です。

しかし、今回ほどロレンスと読者の視点が一致した巻があったでしょうか。
事前の予想を見事に覆されましたね。
デバウ商会には黒い噂がある。ロレンスたちが信頼する人々の情報網もそう示している。そもそもあのイッカクの件から印象が悪い。そして極めつけは、鉱山を求めて北の制圧に乗り出すのではないかという情報。

しかし客観的に見るならば、レスコの街は文句のつけようもないほどの理想郷であった。自由の名の下に発展が約束されたような。
そしてロレンスにとっても、全てを解決する未来が描ける街であった。ヨイツに近い、それはすなわち、ホロと別れることなく自分の店をもてるということ。それも素晴らしい発展の見込める、将来有望なこの街で。
この上ないハッピーエンドを目の前に差し出されたのです。

これが疑わずにいられようか(笑

絶対どこかに落とし穴がある。
悲しいかな、そう思いたくなるのが人の性というやつです。

しかしデバウ商会の目的は目先の鉱山などという小さいものではなかった。武力に拠らない、経済力による独立。おそらくレスコは、この先商業都市として発展し、自治権すら獲得するのかもしれません。いいえ、独自の通貨の発行こそがその証。名目など必要としない実質的な独立です。新たな時代が訪れたのです。
剣や魔法ではなく商人の目で描かれたファンタジー小説である『狼と香辛料』の結末として、これ以上相応しいものはないでしょう。それも、ロレンスとホロにこの上ないハッピーエンドの舞台を贈り物として。

しかしそれだけでは終わらせてくれないのですね。
最後に訪れた不吉な使者。コルに何が起こったのか。なぜこの者は「遍歴の修道女」ではなく「賢狼ホロ」と呼んだのか。そもそも誰なのか?
私にはさっぱり予想がつきません。


今回新登場のミューリ傭兵団ですが、これにも騙されましたね。
ディアナやハスキンズ、ユーグといった面々の登場で、すっかり麻痺していました。てっきりミューリも存命しているものだとばかり。羊たちが教えてくれてたはずだったのに。勇ましいものほど先に旅立つのだと。
しかし実際のミューリ傭兵団は実に気持ちのいい面々でしたね。ミューリ本人が故人となっていたことは残念でしたが、そこに受け継がれたものはしっかり確認できました。

"世の中にいくつもの物語の糸があるとすれば、ミューリ傭兵団にまつわるものの一つが、今ここで終わりを迎えたのだ"

これは泣かずにはいられない。
神から人へ託され、時を経て成就した伝言。厳粛な空気の中どうしようもなく漂う悲しみが伝わってきました。
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